GeForce MX250搭載で性能とモバイルを両立した14型ノート「ThinkPad T490」を検証

レノボ・ジャパンは3月20日、外部グラフィックスを搭載可能な14型モバイルノートPC「ThinkPad T490」(以下T490)を発売した。本製品は第8世代のCoreプロセッサーとNVIDIA製外部グラフィックス「GeForce MX250」を組み合わせられる、性能を重視したモバイルノートPC。50Whの大容量リチウムイオンバッテリを搭載し、LTE通信機能を選択できるなど、モバイル用途にも活用できるモデルに仕上げられている。

今回レノボ・ジャパンよりGeForce MX250を搭載した上位モデルを借用したので、モバイルノートPCとしての使い勝手と性能に重点を置いてレビューしていこう。

CPUはCore i5とCore i7を用意、直販モデルは4種類

T490はCPUに第8世代(Whiskey Lake)の「Core i5-8265U」または「Core i7-8565U」を採用。外部グラフィックスはNVIDIA製「GeForce MX250」を搭載、または選択できる。メモリはオンボードで8GBが実装され、追加メモリとして8/16/32GBのSO-DIMMを搭載できる仕様となっており、日本向けモデルの最大メモリ容量は現在40GB。オンボードに16GBメモリを搭載し、32GBメモリを追加する「48GBメモリ」版は後日販売予定だ。

ストレージはSATA接続の256GB SSDと、PCIe接続の128GB/256GB/512GB/1TB SSDが用意されている。速度の遅いSATA接続のSSDが混ざっている点にはご注意を。SATA接続のSSDを選んでも、PCIe接続より1,080円しか安くならない。特段の理由がなければPCIe接続のSSDを選んだほうがいい。

14型ディスプレイは、HD TN液晶(1,366×768ドット、非光沢、220cd/平方m)、フルHD IPS液晶(1,920×1,080ドット、非光沢、250cd/平方m)、タッチ対応フルHD IPS液晶(1,920×1,080ドット、非光沢、300cd/平方m)、WQHD IPS液晶(2,560×1,440ドット、光沢、500cd/平方m、Dolby Vision対応)の4種類が用意されている。最大解像度のWQHD液晶にタッチ対応は用意されていない。解像度を取るか、タッチ操作を取るかは悩ましい選択だ。

直販モデルは下記の4製品がラインナップされており、「パフォーマンス・プラス」と「プレミアム WQHD搭載」モデルに外部グラフィックスが搭載されているが、カスタマイズ時に選択からはずせば標準価格を15,120円下げられる。

またSIMカードを挿すことでLTE通信が可能になるWWANは「プレミアム WQHD搭載」モデルだけで選択できるが、記事執筆時点(4月18日)でなぜか0円で提供されている(厳密に言うと「WWAN対応」を選択すると「Eクーポン割引」が変わり702円値上がりする)。直販サイトの価格設定が誤っている可能性があるが、選択できる間は「WWAN対応」を選ばない手はない。

Thunderbolt 3に対応、指紋認証センサーは全モデルに搭載

T490の本体サイズは約329×227×18.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量はフルHD液晶モデルが約1.55kg、WQHD液晶モデルが約1.44kgとなっている。カラーはブラックのみ。

インターフェイスは全モデル共通で、USB 3.1 Type-C(Thunderbolt 3対応)、USB 3.0 Type-C(映像出力機能付き)、USB 3.0 Type-A(1基は常時給電)×2、HDMI、Gigabit Ethernet、microSDメモリーカードスロット、ヘッドセットジャック、Webカメラ(720p)を搭載。なお、全モデルの本体背面にSIMカードスロットが存在するが、WWAN非対応モデルではSIMカードを挿入しても機能しない。

通信機能はIEEE 802.11ac、Bluetooth 5.0を搭載しており、「プレミアム WQHD搭載」モデルはWWANを追加可能。また、NFCとスマートカードリーダもオプション扱いとなっている。

セキュリティ機能はWindows Hello対応の指紋認証センサーを標準で搭載。顔認証システムは「パフォーマンス・プラス」と「プレミアム WQHD搭載」モデルには標準搭載されているが、ほかの2モデルもカスタマイズで選択可能だ。

バッテリは全モデルに50Whの3セルリチウムイオンバッテリが内蔵されており、バッテリ駆動時間はパーツ構成によって異なるが最大約17.8時間とされている。ただし高解像度、高輝度のWQHD液晶モデルでは大幅にバッテリ駆動時間が短いはずだ。なおACアダプタは「45W ACアダプター」と「65W ACアダプター」の2種類が用意されており、後者では1時間で約80%まで充電可能な急速充電機能を利用できる。

なお製品公式サイトには、ディスプレイの視野角をせばめて覗き見を防止する「ThinkPad Privacy Guard」機能、覗き見を検知してアラートを出すとともに自動的に「ThinkPad Privacy Guard」機能を有効にする「ThinkPad Privacy Alert」機能についての言及があるが、記事執筆時点(4月18日)のカスタマイズ項目には選択肢がなかった。Webカメラを物理的にふさぐ開閉式カメラカバー「ThinkShutter」は全モデルに用意される。

いい意味で変化のない入力デバイス、一度使うと手放せない「Lenovo Vantage」

ThinkPadシリーズの最新モデルであるT490のキーボード、トラックパッド、トラックポイントにはいい意味で変化はない。キーボードのキーピッチは約19mmが確保されており、打鍵感は良好。キー、左右クリックボタン、トラックパッドのクリック音も低めに抑えられており、比較的周囲を気にせずタイピング可能だ。

ちなみに今回の貸出機にはバックライトなしの日本語キーボードが搭載されていたが、試用中やはり不便に感じた。プラス3,240円でバックライト付きに変更できるので、暗所で使う機会が多い方は忘れずに選択しておいたほうがいい。

筆者は個人的に「ThinkPad X1 Yoga」の2018年モデルを愛用しているが、ユーティリティ「Lenovo Vantage」は重宝している。最新のBIOS、ドライバをWindows上でまとめてチェック、アップデートできるのは初心者にはわかりやすいし、中/上級者の手間もはぶいてくれる。アップデートがちょっと頻繁すぎるのではと思わなくもないが、それだけ迅速に不具合を修正してくれているのだから、個人的には高く評価している。

WQHD IPS液晶ディスプレイのAdobe RGBカバー率は実測99.9%

T490のディスプレイには、HD TN液晶、フルHD IPS液晶、タッチ対応フルHD IPS液晶、WQHD IPS液晶の4種類が用意されている。今回の貸出機には唯一「Dolby Vision」に対応するWQHD IPS液晶ディスプレイが搭載されていた。このWQHD IPS液晶ディスプレイは、解像度が2,560×1,440ドット、表面処理が光沢、輝度が500cd/平方m、そしてDolby Vision対応であることは公表されているが、色域やコントラスト比は非公開だ。

そこで実際の色域をディスプレイキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で確認してみたところ、sRGBカバー率は100.0%、sRGB比は144.7%、Adobe RGBカバー率は99.9%、Adobe RGB比は107.3%と優秀な値だった。

カラープロファイルを「ColorAC」に読み込んださいに「注意 : このICCプロファイルのLUT Green Blackにクリップ(値が飽和)の可能性が見られます」という警告メッセージが表示され、また、色度図を見るとグリーンの部分がいびつな形状になっているので正確な色域を計測できていない可能性がある。しかし、それを差し引いてもT490に搭載されているWQHD IPS液晶ディスプレイが、モバイルノートPC向けとして非常に広い色域を備えていることは間違いなさそうだ。

一方、悪い意味でThinkPadらしいのがサウンド品質。キーボード奥の特等席にスピーカーが内蔵されているが、ボリュームは小さいし、解像感や音の伸びも物足りない。ダイナミックレンジ、コントラスト比、色再現力に優れる「Dolby Vision」対応のWQHD IPS液晶ディスプレイを搭載できるだけに、オプションでもよいので映像に見合ったサウンドシステムをぜひ提供してほしいと思う。

GeForce MX250搭載の恩恵は3Dゲームやクリエイティブ系アプリで実感!

さて最後にベンチマークスコアを見てみよう。今回は下記のベンチマークを実施している。

総合ベンチマーク「PCMark 10 v1.1.1761」

総合ベンチマーク「PCMark 8 v2.10.901」

3Dベンチマーク「3DMark v2.8.6546」

CPU/OpenGLベンチマーク「CINEBENCH R15.0」

CPU/OpneCLベンチマーク「Geekbench 4.3.3」

ゲーミングPCベンチマーク「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」

ゲーミングPCベンチマーク「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」

ゲーミングPCベンチマーク「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」

ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 6.0.2」

「Adobe Lightroom Classic CC」で100枚のRAW画像を現像

「Adobe Premiere Pro CC」で実時間5分の4K動画を書き出し

バッテリベンチマーク「BBench」で連続動作時間を計測

バッテリベンチマーク「BBench」で充電時間を計測

今回は比較対象機種として、同じく「Core i7-8565U」を搭載する「XPS 13」を採用した。筆者が直近でレビューした「Core i7-8565U」搭載ノートPCのなかでもっともベンチマークスコアが高かった「XPS 13」に対して、外部グラフィックス「NVIDIA GeForce MX250」を装備したT490はどれだけの性能を発揮するだろうか?

CPU単体の性能で比較するとXPS 13のほうが上だ。CINEBENCH R15.0のCPU、Geekbench 4.4.4の32-bit Multi-Core Score、64-bit Multi-Core ScoreでT490はXPS 13の91~92%のスコアにとどまっている。

一方3Dグラフィックス性能は、NVIDIA GeForce MX250で武装したT490がやはり有利で、とくに3DMarkのFire Strike ExtremeではXPS 13の3.17倍ものスコアを叩き出している。ゲーミングPC向けベンチマーク3本でもT490はXPS 13の2.38~3.98倍のスコアだ。

実際のアプリでも外部グラフィックスは有効に働いた。Adobe Premiere Pro CCの4K動画書き出しで、XPS 13の10分14秒88に対してT490は半分以下の4分35秒00で処理を完了した。ベンチマークだけでなく実アプリでもT490のほうが総合性能が高いのは間違いなさそうだ。

一方ちょっと残念な結果に終わったのがバッテリ駆動時間。バッテリ残量5%までの連続動作時間は、ディスプレイの明るさ40%で6時間23分14秒、ディスプレイの明るさ0%でも9時間51分19秒にとどまっている。XPS 13のディスプレイの最大輝度は400cd/平方mで、また外部グラフィックスを搭載していないのでイコール条件ではない。しかしバッテリ容量を増やして重くなったとしても、T490もあと2時間ぐらいバッテリ駆動時間が長ければ安心して外出先で使えると思う。

最後に本体表面の発熱をチェックしてみたが、高負荷時に底面が57.8度と非常に高くなっているのが気になった。サーモグラフィーカメラで見てみると、ちょうどCPUのヒートシンクがカーブしている部分に熱が集中しているようだ。冷却口横の底面表面でも55度を超えていたので、CPUがフル稼働するような作業をするさいには長時間膝上に置かないなどの予防策が必要だ。

性能とモバイル性を両立したThinkPadがT490

T490は「ハイパフォーマンスビジネスノート」という位置づけのTシリーズにラインナップされているThinkPadだ。しかし、外部グラフィックスを搭載すれば3Dゲームやクリエイティブ系アプリも快適に動作させるし、Dolby Visionに対応するWQHD IPS液晶ディスプレイも用意されている。薄型軽量を追求したXシリーズと比べると携帯性という点ではおよばないが、性能とモバイル性を両立したThinkPadがほしいのなら、T490は最右翼の存在だ。