P20 Proから何が変わった? 「HUAWEI P30 Pro」のカメラ機能を徹底レビュー

3月26日にフランス・パリで発表された「HUAWEI P30」シリーズ。6.47型画面でクアッドカメラを搭載する「HUAWEI P30 Pro」と、6.1型画面でトリプルカメラを搭載する「HUAWEI P30」の2モデルがリリースされた。今回、上位モデルの「HUAWEI P30 Pro」をいち早く借りることができた。最大のセールスポイントであるLeica(ライカ)の4眼カメラで撮影した作例を交えつつ、その使い勝手をレポートする。

6.47型の大画面ながら、持ちやすいサイズ感を実現

HUAWEI P30 Pro(以下、P30 Pro)は6.47型の有機ELディスプレイを搭載している。画面アスペクト比は19.5:9で、解像度は1080×2340ピクセル。画面上部には水滴型のノッチ(切り欠き)があり、そこにインカメラを搭載している。前モデルの「HUAWEI P20 Pro」(以下、P20 Pro)は、ノッチにインカメラと通話用のスピーカーを搭載していたが、P30 Proでは、ディスプレイから音が聞こえる仕組みになっている。

実際に電話をかけてみたが、最初の数回は「ここに耳を当てると高音質で聞ける」といったガイドが表示された。音質は従来モデルと比べて遜色はなく、耳を当てる位置もさほど意識することはなく、画面のどこに耳を当てても通話できそうだ。

P20 Proではディスプレイの下に搭載されていた指紋センサーはディスプレイ内に移動された。この「インディスプレイ指紋認証」は、「HUAWEI Mate 20 Pro」(以下、Mate 20 Pro)に初搭載され、それを受け継いだものだ。アンロックの速度はMate 20 Proより速くなっているそうで、画面オフの状態からでも指を当てるだけで、ほぼ一瞬でロックを解除できる。なお、顔認証でのアンロックもスピーディーに行えるが、顔認証は2Dなので、セキュリティを重視する人は指紋認証を用いた方がいいだろう。

フロントパネルの左右端には3Dカーブが施されている。左右のベゼルは2.2mmと細く、本体を握ると自ずと画面端に指先が触れるが、画面が反応することはない。されど、画面端をなぞる操作にはしっかりと反応する。予期せぬ誤操作が生じないようい、細かい使い勝手にまで配慮されているように感じられた。

サイズは73.4(幅)×158.0(高さ)×8.41(奥行き)mmで、重さは192g。前モデルのP20 Proよりもひと回り大きく、12gほど重くなった。しかし、実際に手に持つと、さほどゴツくは感じなかった。スペックを比べてみると、本体の横幅は、わずか0.6mmだが細くなっていた。P20 Proではフラットだったフロントパネルが、P30 Proでは3Dガラスになったことも持ちやすさの向上につながっているようだ。

カラーバリエーションは5色あり、筆者が借りているのはBlack。鏡面仕上げで光沢が強く、さりげなく高級感をアピールしたい人におすすめ。個人的には、光の当たり方などによって色の見え方が変化するBreathing Crystal、Pearl Whiteなどにひかれたが、国や地域によって販売されるカラーが異なるらしく、日本向けにどの色が採用されるかは分からない。

10倍ハイブリッドズーム撮影を試してみた

P30 Proの神髄は「Leica Quad Camera」にあると言って差し支えないだろう。4つのカメラは、4000万画素の広角カメラ(27mm/F1.6)+2000万画素の超広角カメラ(16mm/F2.2)+800万画素の望遠カメラ(125mm/F3.4)に、3D情報を取得できる「ToFカメラ」を加えた構成になっている。Leicaがどこまで開発に関わっているのかは分からないが、Leicaが認めた画質で撮れると考えていいだろう。

前モデルP20 Proのトリプルカメラでは、光学3倍ズームに対応しており、5倍までは画質がほとんど劣化しないハイブリッドズームで撮影できた。P30 Proでは、望遠カメラの焦点距離が125mm(35mmフィルム換算)になり、光学ズームは5倍、ハイブリッドズームは10倍へと進化を遂げた。ズームの性能はいかほどか? 筆者が撮った作例を見ていただこう。

全てスマホを手に持って撮影したが、10倍のハイブリッドズームでも鮮明な画質で撮影できた。もう1つ、パリの街角で撮った作例を見ていただきたい。

肉眼では、本が積まれていることが分かる程度だが、10倍ズームにすると書名まではっきりと読み取ることができる。光学ズームと同等の画質といっていいだろう。

なお、P30 Proのアウトカメラは、10倍を超えて、最大50倍のデジタルズームで撮れる仕様になっている。しかし、50倍にすると、さすがに画質は粗くなる。また、スマホを持つ手がわずかに動くだけでも撮りたい被写体がフレームからずれて、ピントを合わせること自体が難しくなる。三脚などで固定して撮るのが理想だが、外出時に三脚を持ち歩く人は少ないだろう。だから頑張って手持ちで撮ってみた。

個人的な印象として、手ブレを気にせずに撮れるのは20倍程度までだと思うが、できるだけ手を動かさないようにすれば、50倍にしても、そこそこの画質は得られる。被写体に近づけない状況で役に立つことはあるだろう。

前モデルP20 Proと比べてみると……

P30 Proは、HuaweiのAI対応の最新プロセッサ「Kirin 980」を搭載している。前モデルP20 Pro(Kirin 970を搭載)から一世代進み、AIによるシーン認識の性能は向上したと考えるのが妥当だ。

また、画質に大きく影響する画像センサーも変更された。P20 Proでは、4000万画素のカラーセンサーと2000万画素のモノクロセンサーで取得した情報を融合させて、鮮明かつ精緻な画質を実現する仕組みだった。P30 Proでは、全ての画像センサーがカラーになり、しかも、従来のRGGBセンサーではなく、「RYYBセンサー」というものを初採用している。R=赤、G=緑、B=青、Y=黄を表す。緑のフィルターを黄色のフィルターに置き換えたRYYBセンサーによって、光を取り込む効率が40%もアップしているそうだ。

AIの進化やセンサーの改良が画質にどのような変化をもたらしたのか? P20 Proと撮り比べてみた。

「AI」のオン/オフがしやすくなった

撮影画質はどちらがいいというものではなく、好みにもよる。また、フィルムを変えるようにカラーモードを切り替えられる機能はP20 Proから継承されている。手動で設定できる「プロ」モードも、設定できる数値に変更はあるが、使い勝手に大きな変更はない。

使い勝手の面で筆者が気に入ったのは、撮影画面で「AI」のオン/オフができるようになったこと。P20 ProやMate 20 Proなど、Leica監修モデルでは、AIのオン/オフは、カメラの設定画面を開いて「マスターAI」という項目でオン/オフを設定する必要があった。撮影時に画面の上に「AI」アイコンが表示されることで、AIを必要としない場合は、ワンタッチで解除できるわけだ。

実は、Leicaの技術を用いていない「nova 3」や「nova lite 3」は、撮影画面からAIをオン/オフできるようになっている。つまり、P30 Proのカメラアプリのインタフェースはnovaシリーズに近づいたともいえる。ただし、nova 3などでは、撮影した画像のAI効果を後からオフにすることができるのだが、P30 Proではできない。

P20 Proからの進化点としては、被写体に2.5cmの距離まで近づいて撮れる「スーパーマクロ」に対応したことも見逃せない。AIをオンにして被写体に接近すると、自動で「スーパーマクロ」に切り替わるが、「その他」の画面から手動で選択して起動することもできる。

いろいろなシチュエーションで撮ってみた

Mate 20 Proに引き続き、超広角撮影が可能になったことも大きな魅力だ。一般的なスマホのカメラではフレームに収まらないものまで撮れたり、広い景色をより広く見せたり、遠近感を強調させたり、作品としての表現の幅も広げられるはずだ。個人的には、ズーム以上に活用できるシーンが多いのではないかと思う。

「HUAWEI P9」以来の人気機能だが、最近は注目度が薄くなってきた「ワイドアパーチャ」。絞り値をコントロールしてボケ味を調整できる機能だ。新たに搭載されたToFカメラの効果なのか、P30 Proでは、デジタル一眼で撮った場合に近い自然なボケ味が得られると感じられた。

「ポートレート」に設定して撮った場合も、背景をぼかして人物が際立つように撮れる。P30 Proの発表会では、人物の髪の毛まで認識して、きっちりと背景だけをぼかす「Pro Bokeh」をアピールしていた。スマホのカメラは、たとえダブルレンズを搭載していても、ボケが不自然になることはありがちだ。しかし、P30 Proで撮ってみた限りでは、ボケの精度は高いように思えた。

3200万画素のインカメラはシングルレンズだが、「ポートレート」にすると、背景をぼかすことが可能。背景も写し込める画角で撮れて、ボケ味も自然。セルフィーを楽しみたい人も満足できるだろう。

スタミナと充電の速さは特筆すべきレベル

カメラ機能ばかりが注目されがちなP30 Proだが、基本性能にも死角はなさそうだ。筆者が借りているサンプル機は、メインメモリが8GBで、ストレージが256GBのモデルだが、1週間ほど使った限りでは、全くストレスは感じずに、軽快に操作できている。

4200mAhの大容量バッテリーを搭載しているので、バッテリーの持ちがよいことは言うまでもない。加えて、充電速度が早いことも魅力だ。最大40Wの急速充電に対応していて、付属の充電アダプターを使えば、非常にスピーディーに充電できる。きっちり時間を計測したわけではないが、1日使っても50%以上残り、それを充電するのに30分も要らない印象だ。

OSはAndroid 9で、Huawei独自のEMUI 9.1も搭載されている。ホーム画面の表示を変えたり、ナビゲーションキーを非表示にして、ジェスチャー操作に切り替えたりするなど、カスタマイズの自由度は高い。

HUAWEI P30 Proがあれば、もはや旅行にデジカメを持っていく必要はなくなりそう。パワフルでバッテリーの持ちもすこぶるよいので、ビジネスで使い倒すスマホとしても頼もしい。すぐに日本で発売してほしいと思う仕上がりだ。