Xeon W-3175X徹底検証!クリエイター向けIntel最強28コアCPUは32コアに勝つ?

ここ2年ほどで急激に加速しているメニーコアCPU戦争。現在HEDT向けCPUで最多コア数を誇るのは、ご存知AMDの「Ryzen Threadripper 2990WX」(以下、Threadripper 2990WX)である。8基のCPUコアを備えるダイ4基を連結して32コア/64スレッド駆動という“ほぼEPYC”のようなCPUなのだが、残念ながらインテルはこれを上回る製品を出せていない。従来のCore Xシリーズ、すなわちSkylake-X Refreshベースの製品では18コア/36スレッドの「Core i9-9980XE」が最多となる。

しかし、次のプロセスが軌道に乗るまでAMDの独走を許すインテルではない。ついにXeonファミリーをHEDT向けに降ろすことで、AMDの進撃を食い止める策に出た。それが28コア/56スレッド駆動の「Xeon W-3175X」だ。インテルは“最先端のプロクリエイターに、世界最高水準のパフォーマンスを提供”するための製品と位置付けている。

このXeon W-3175XはSkylake系統のアーキテクチャーで設計されたCPUだが、従来のCore Xシリーズとソケットやメモリーまわりの仕様が完全に異なる。米Amazonではようやく対応マザーボードが発売されたが、国内ではまだ試せる環境すらない。だが今回米インテルからXeon W-3175Xを組み込んだ評価用PCを借り受け、その上で動作検証を行なう機会に恵まれた。

検証PCの外観などについてはジサトライッペイ氏によるショートレビューの通りだが、今回は様々な角度から詳しく調べてみたい。インテルの意地で投入された雰囲気すらあるXeon W-3175Xは、コア数で勝るThreadripper 2990WXにどこまで対抗できるのだろうか?

メニーコアモンスターThreadripper 2990WXと対決

前置きはこの程度にして、検証環境の紹介に入ろう。検証マシンはセットアップされた通りの状態で使用した。ただし、OSに日本語パックを入れている。比較CPUは少々悩んだが、Threadripper 2990WXとした。各CPUは定格状態での性能を比較する。また、Threadripper 2990WXのコンピュートダイにタスクが割り振られるとパフォーマンスが上がらなくなる問題に対処するため、Ryzen Masterを導入し、Dynamic Local Modeを有効にしている。

いつもなら電源ユニットやストレージを極力共通化して検証するところだが、今回はテストマシンが超大型でパーツの取り外しに大変な手間がかかるため、Threadripperマシンと共通部分はOSとビデオカード(GeForce GTX 1080)のみにとどめた。CPUの価格帯もほぼ2倍近く違うため、今回の対決はインテル対AMDのHEDT向けCPU頂上決戦という名のエキシビジョンマッチと考えて頂きたい。

コア数が少なくても抜群の性能を見せるXeon

では定番の「CINEBENCH R15」で力比べといこう。ただし、このクラスのCPUにはもうCINEBENCHは軽すぎて話にならないため、「CINEBENCH R15 Extreme Edition」も回してみた。後者は公式のテストではなく、有志が作成したものなので参考程度に見て頂きたい。

28コア/56スレッドが32コア/64スレッドを上回った。物理的なコア数ではライバルを上回ることはできないが、計算力で上回ることでインテルは一矢報いた、といった感じだろう。

また、マルチスレッドスコアーの高さに目がいくが、シングルスレッドのスコアーも高い。今回は調達の関係でテストは見送ったが、別記事を見るかぎり、Core i9-9980XE並みのパフォーマンスを出せていることになる。

ざっくりとしたパワーがわかったところで、まずは軽めに「PCMark 10」で総合的なパフォーマンスをチェックしてみよう。テストは全ワークグループを実行する「Extended Test」を実施した。

今回は総合スコアーのほかに、各テストグループ別のスコアーもひとつのグラフに収めてみたが、このテストは意外なことにThreadripper 2990WXに負けている。ワークグループ別にスコアーを検分すると、処理が軽めな“Essentials”と“Productivity”はThreadripper 2990WXが強く、“Digital Contents Creation(DCC)”と“Gaming”はXeon W-3175Xが強い。

今までのインテル対AMDの構図だとインテル製CPUはコア数が少なくてもEssentialsとProductivity、Gamingの3つで勝ち、DCCはコア数の多いAMDに譲るというパターンが多かったが、今回は様子が異なるのが面白い。プロクリエイター向け製品というだけあって、DCCでキッチリ勝利を収めているのはさすがだ。

PCMark 10のGamingテストグループではThreadripper 2990WXよりも高スコアーを出し、ゲーミング性能における優位性も示していた。ということで、お次は「3DMark」を回してみよう。コスト的にもゲーマー向けとは言い難い製品ではあるが、物理演算でどの程度のスコアーが出るか少し観察してみたい。今回は「Fire Strike」のみ実施した。

CPUのパフォーマンスがゲームグラフィックの描画に影響を与えるのは常識だが、今回の対決でもXeon W-3175XのほうがGPUの性能をよく引き出せていることがわかる。シングルスレッド性能だけではなく、メモリーとCPUの連携など、モノリシックダイならではの強みが出ているようだ。PhysicsもXeon W-3175Xの圧勝だが、CombinedはThreadripper 2990WXに一歩及ばなかったという点は興味深い。

CG系ではコア数格上のThreadripper 2990WXを凌駕

ここからはクリエイティブ系アプリにおけるパフォーマンスを比較していこう。まずはCG系から「Blender」で試してみる。Blenderは公式サイトから取得できる「Gooseberry Production Benchmark」を利用し、1フレームのみをレンダリングする時間を計測した。

ここでもコア数の少ないXeon W-3175Xがコア数の多いThreadripper 2990WXよりも速く処理を終えた。単純なコア数比よりも若干Xeon寄りということは、CPU内部のスループットや、単純なコアのIPCにおいてXeonは優れていることを意味する。

とはいえ、値段はほぼ倍(Xeon W-3175Xが約38.9万円で、Threadripper 2990WXは約21.7万円)で16%弱の短縮なのだから、コスパは……と続けたくなるが、そういう話は結論まで伏せておこう。ひとまずインテルにはまだライバルを力技でねじ伏せられる製品があったことを喜びたい。

さらに確信を深めるために「V-Ray Benchmark」でも試してみよう。CUDAを利用したテストも選択できるが、今回の主題はCPUパワーなので、CPUを使ったレンダリング時間のみを計測する。

ここでもXeon W-3175XがThreadripper 2990WXより短時間で処理を終えたが、その差わずか2秒。レンダラー次第で両CPUの差はかなり変わってくることが示唆されている。

最後にもうひとつCG系から「Houdini Apprentice」のパフォーマンスを比較してみよう。これは“プロシージャル型”のCG制作アプリで、煙や流れる粒子といった物理演算の入ったCGの作成において高い実績を持つアプリだ。

今回は暴れ馬のように回転する受け皿の上に置いた砂のような粒子がどのように動くかプレビューさせてみた。粒子のpoint数は49万弱、最初のフレームから120フレーム後をプレビューする際の時間を内蔵パフォーマンスモニターを利用して計測した。

この処理中のCPU負荷は全コア100%に到達するため、CPUのコア数が極めて重要になるのだが、このテストでもXeon W-3175XがThreadripper 2990WXに大差をつけて勝利している。たった120フレームで3分近い差ができるのだから、もっと尺の長いシーンになれば差はどんどん広がるだろう。時間をお金で買いたいプロクリエイターには、Xeon W-3175Xのほうがよりトライ&エラーを繰り返せるので頼りになるCPUと言えるだろう。

動画編集ソフトでも安定して高速なXeon W-3175X

続いては動画編集系アプリで検証しよう。Threadripper 2990WXはCPU内部がやや特殊な構造になっており、処理が発生するダイ(ノード)がメモリーに直結していないと非常に遅くなるが、特に動画エンコード系で弱いという特徴がこれまでの検証からわかっている。当然モノリシックなメニーコアCPUであるXeon W-3175Xはその弱点がないと考えられるが、実際に回してみないことには断言はできない。

まずは「Premiere Pro CC」で再生時間2分20秒の4K動画を作成し、それをH.264形式(29.97fps)のMP4形式に書き出す時間を計測する。

もともとPremiere ProのエンコーダーはAMD系CPUには相性が悪く、特にThreadripper 2990WXではあまり速くならないことが指摘されている。今回使用したPremiere Proでもまだその傾向を引きずっており、Threadripper 2990WXはXeon W-3175Xの約2倍ほどの処理時間と振るわない結果だった。

また、Threadripper 2990WXはブレが大きく、今回は7回計測して中央値で比較している。170秒前後で終わる時もあるが240秒を超えることもあった。コンピュートダイに処理が落ちた時の速度的ペナルティーが極めて大きいThreadripper 2990WXに対し、最短と最長の結果が5秒も違わないXeon W-3175X、という極めて対照的なテストとなった。安定感という意味でもXeon W-3175Xに軍配が上がるだろう。

続いては「HandBrake」だ。ゲームを4Kでプレイした際の動画(再生時間約5分)をフルHDのMP4形式に書き出す時間を計測した。コーデックはx264(H.264)及びx265(H.265)を利用し、フレームレートは60fpsの固定フレームレートとした。画質などの設定はプリセットの「SuperHQ 1080p30 Surround」をベースにしている。

Premiere Pro CCと同様、Xeon W-3175Xは安定して速い。特に計算量の多いH.265の処理でThreadripper 2990WXに大きな差をつけている。やはり動画編集系アプリを安定して速く実行したいなら、インテル系CPUを選ぶほうが得策と言えるだろう。

Threadripperと相性の良いソフトでも比較

しかし、Threadripper 2990WXレビュー時に苦手であると判明したアプリだけで断言するのはフェアーではない。特に先の2つのアプリが採用するエンコーダーはThreadripper 2990WXだとCPU占有率が上がりきらないことが多く、それも速度が出ないことの一因ではないかと考えられる。

ではThreadripper 2990WXと相性の良い「VEGAS Pro 16」ではどうだろうか? 今回は体験版を使用し、初回起動時に開かれるサンプルクリップを4Kにストレッチ、H.265形式のMP4ファイルに書き出す時間を計測した。

このテストではXeon W-3175Xに負けはしたものの、処理時間の差は10秒にも満たない。VEGAS Proを使う限りは、Xeonを選ばなくても良い、といったところだろう。ただし、32コア/64スレッドのCPUが28コア/56スレッドのCPUに負けているわけで、Xeon W-3175Xの強みはコアあたりの処理性能であると言えるだろう。

動画編集系でもうひとつ、「After Effects CC」も試してみよう。ここでは4K動画に映った物体の動きを検出する処理、すなわち“モーショントラッキング”を試してみた。なお、動き検出に使った動画の再生時間は11秒弱である。

CINEBENCHなど数々のベンチマークでThreadripper 2990WXを圧倒したXeon W-3175Xであったが、このテストでは逆にThreadripper 2990WXの後塵を拝している。

その理由はこのテストで負荷がかかるのはほぼ1コアのみで負荷も弱いこと。そして、今回のXeon W-3175Xマシンの省エネルギー設定が「バランス」であることの2つが原因である(Threadripper 2990WXは“Ryzen Balanced”設定)。CINEBENCHのように高負荷が継続すればシングルコアでもクロックが上がるが、このテストのような弱い負荷の連続の場合は、逆に遅くなる場合もある、ということだ。

RAW現像ではThrearipper 2990WXの2倍高速

少々趣向を変えてRAW現像系アプリも試してみよう。「Lightroom Classic CC」を利用し、200枚のNEF形式の画像(6000×4000ドット)を読み込んだ状態から、全画像に1:1プレビューを作成する時間と、それをそのまま最高画質のJPEG画像に書き出す時間を計測する。書き出し時にはスクリーン用のシャープネス処理を追加した。

プレビュー作成でもJPEG書き出し+シャープネス処理でも、処理のマルチスレッド化が進んでいるが、コア数の少ないXeon W-3175Xが圧勝した。合計時間で言えば、ちょうど2倍高速で、写真編集におけるプロの現場でも活躍できることを証明した。

ここでの差はCPUアーキテクチャーの差、もっと言えば構造的な差が根本にある。Threadripper 2990WXのMCMソリューションは画期的だが、次世代のZen 2へ移行するまでは、Xeon W-3175Xのようなモノリシックダイなソリューションのほうが有利なのだろう。

ゲーム制作における用途でも強いXeon W-3175X

最後に、さらにひと味違った用途、「ゲーム制作におけるCPUパワー」を考えてみよう。ここで利用するのは「Unreal Engine 4」である。無料で利用できる「Infiltrator」のビルド時間を計測する。リアルタイム表示はオフとし、ライティングの品質を“プロダクション”とした。ログファイルを分析して開始時と終了時のタイムスタンプから経過時間を算出している。

これもCPUのコアを使い切るような強烈な負荷がかかるが、Xeon W-3175XはThreadripper 2990WXの2.5倍近いスピードで処理を終える。CPUのコスト云々は別として、現段階ではXeon W-3175XのようなモノリシックなデザインのCPUは安定して強いことがわかった。

全コア4.3GHzにオーバークロックしてみた

Xeon W-3175Xは倍率ロックフリー、すなわち倍率を引き上げることでオーバークロック(以下、OC)に挑戦できる。このCPUの試作品と見られるものがお披露目されたCOMPUTEX TAIPEI 2018の実機デモでは、CPUクーラーに巨大なチラーを接続した上で全コア5GHz動作を達成していたが、今回のCPUクーラーは360mmラジエーターの簡易水冷タイプなので当然上限は下がる。

OC方法はこれまでのインテル製CPUと同じく、BIOSもしくは「Intel Extreme Tuning Utility」(通称“XTU”)を利用して倍率を変更する。今回はWindows上で調整できるという手軽さを重視して後者の方法を選択した。

また、コア電圧には手をつけず、倍率アップだけで目指せるだけ上を狙う。このXeon W-3175XのTjmaxはわずか85℃と、普通のCore i7を使う感覚で扱っては痛い目を見ることは明らかだ。

まず結論から言うと、XTUでもBIOSでも倍率を引き上げただけだとCINEBENCH程度の負荷でもクロックが下がりはじめる。CPUに流れる電力制限に引っかかっているようだ。そこで、XTU上でCPUの電力まわりの制限値を限界まで引き上げてみるとかなり改善された。数値上は全コア45倍の4.5GHz設定でも難なく動作したが、CINEBENCH中のクロックを見ると4.3GHzに落ち着く。どうやら検証機に搭載していた簡易水冷クーラーでは4.3GHzが限界のようだ。

では「CINEBENCH R15」と「CINEBENCH R15 Extreme Edition」を用いて定格時と全コア4.3GHz OC時のスコアーを比べてみよう。

定格設定だとマルチスレッドテスト時のクロックはおおよそ全コア3.8GHz。これが4.3GHzに引き上げたことで、5~10%のスコアーアップとなった。最も伸びたCINEBENCH R15のマルチスレッドテストのスコアーの伸びは、OC前と後でのクロックの上昇率とほぼ一致している。効果はそれなりに得られたようだ。

全コア4.3GHz OC時の消費電力と熱

さて、消費電力はどうだろうか? ということでラトックシステムのワットチェッカー「REX-BTWATTCH1」を利用してシステム全体の消費電力を計測した。システム起動10分後の安定値を“アイドル時”、「Prime95」の“SmallFFT”を30分実行した時の最大値を“高負荷時”としている。

また、Xeon W-3175XについてはPrime95で負荷をかけている際のCPUパッケージ温度と28基ある物理コアの最大倍率の推移を「HWiNFO」で追跡した。

さすがに超大型マザーボードと超弩級CPUの組み合わせだけあって、アイドル時の消費電力はかなり高い。だが、定格ならPrime95を回してもThreadripper 2990WXとほぼ同レベルの消費電力である点には驚きだ(前述の通り共通パーツが少なすぎるので、厳密な比較ではない点に注意!)。

しかし、それ以上に驚くのは全コア倍率43倍にOCした時の消費電力。なんと700Wを超えてきた! ここまで豪快に消費されるともはや笑いしか出てこない。Xeon W-3175XをOCでぶん回すユーザーはキロワットクラスの電源ユニットは必須になるだろう。

そして、もっと笑えたのがCPUパッケージ温度の推移だ。まずご覧いただこう。

定格だとPrime95で超高負荷をかけても70℃を超えることはないどころか、61℃付近で安定する。これを達成するために水冷クーラーのファンが常時轟音を立てて回っているので当たり前だが、これをOCするだけで一気に84℃、つまりTjmaxの1℃手前まで上がり切る点に注目してほしい。

アイドル温度は30℃前後だが、負荷をかけた瞬間に84℃まで上昇。温度計測のインターバルである1秒の間にTjmaxギリギリまで回ってしまうのは恐ろしい。インテルが5GHzデモの時にチラーを用意したのも納得がいくというもの。瞬時に最高速かつ最大温度に到達するさまはまるでスーパーカーだ。

まとめ:何をしても切れ味バツグン! 時間をお金で買いたいプロクリエイターにとっては最高のCPU

以上でXeon W-3175Xの検証は終了だ。巨大で重い機材、悲鳴を上げる筆者の腰、そして遠慮なく回る冷却ファンの咆哮に苦しめられた検証だったが、やはりHEDT向け製品はパワーが正義。エンコードだろうがCGレンダリングだろうが、どんなに重い処理を任せてもまったく苦にならないモンスターパワーは最高だ。

特に動画エンコード系処理に関しては、アプリを選ぶThreadripper 2990WXに対して、Xeon W-3175Xなら好き嫌いせず高速で処理を終えてくれる。プロクリエイターであれば、CPUをThreadripper 2990WXに替えたからといって、作業のワークフローまで簡単に切り替えられるわけではない。Xeon W-3175Xはプロが時間を節約するための最強CPUと言って差し支えない。

だが、あえてここまで言及を避けてきたがコスト面の話をさせてもらえれば、これは如何ともし難い。Xeon W-3175XはCPUだけで約38.9万円、マザーボードも20万円ぐらいになると考えると、Threadripper 2990WX(約21.7万円)+X399マザーボード(3~7万円)がなんともお買い得に見えてくる。乱暴な話をすると、処理時間が2倍かかるのなら単純に2台買ってしまうという手もある。

もちろん、プロ向けのアプリの場合、PCの台数単位でライセンス料がかかるものもある。そのため、1台で速いXeon W-3175Xのほうがトータルでお得、ということも考えられる。このあたりはワークフローに組み込まれたアプリのライセンス形態によって、コスパが変わってくるだろう。

また、そもそも今回のXeon W-3175Xに関しては、Threadripper 2990WXと比較すること自体が無茶だという気もする。価格ベースならEPYCと比較すべきだが、そのEPYCはサーバー用として売られているものでジャンルが異なる。Xeon W-3175Xは、子供(HEDT)の喧嘩に大人(サーバー向けXeon)が子供のふりをして乱入してきたようなもので、もとよりバランスのとれた勝負が成り立たない領域。だから今回の対決は「エキシビジョンマッチ」なのだ……。

なんとかインテルがHEDT最速の座を名目的に奪還したような感じではあるが、インテルの春はそう長く続かないかもしれない。CESでAMDが発表した通り、メモリーやPCI-EなどのコントローラーをIOダイに集約させ、マルチダイ構成でもコンピュートダイのような不遇なコアを作らないZen 2ベースのEPYCのローンチが迫っているからだ。

Zen 2の詳細は大原氏の記事に詳しく書かれているが、さらにスループットが上がると期待されている。当然、EPYCのあとには次世代Threadripperが続くわけで、コンピュートダイという泣きどころが解消されると、果たしてこの勝負、どう転がるかわからない。

まだZen 2ベースの製品が存在しないためここからは空想となるが、AMDの目論見がうまくいけば、Threadripperの弱点は解消されるだろう。そうなれば「コスパ!コスパ!」と呪文を唱えなくてもThreadripperがHEDTにおける疑いようのない真の最強CPUになる可能性もあるのだ。もちろん、それに対するインテルのさらなるカウンターもあるだろう。今年後半の展開も楽しみだ。