載せ替え可能なデスクトップCore i5を搭載するユニットコムのゲーミングノート

昔からノートPC向けのCPUは、デスクトップPC向けと比べると動作クロックは低く、コア数やスレッド数も少ない傾向にある。ノートPCでは、デスクトップPCのように大型のCPUクーラーや冷却ファンを搭載できないため、こうした差別化はある意味で仕方のないことではある。

しかし世代を経て改良を重ねることで、CPUの消費電力や発熱は大きく低下した。ノートPC向けの簡易的なCPUクーラーでも、デスクトップPC向けのCPUをしっかり冷却できるなら、より安くて性能の高いノートPCを作れるのではないか。

今回紹介するユニットコムの15.6型ノートPC「LEVEL-15FX080-i5-LNSX」はそうした発想から生まれた、なんとデスクトップPC用のCPUを搭載するノートPCである。

CPUはCore i5-8400、外付けGPUも搭載する

 LEVEL-15FX080-i5-LNSXは、ゲーミング向けのLEVEL∞ブランドに属する製品で、フルHD解像度をサポートする15.6型液晶を搭載したA4サイズのノートPCとなる。全体的に鋭角なデザインを採用しており、キーボードはテンキーを含めたフルキーボード構成だ。

メモリ、ストレージ構成、Microsoft Officeのバンドル有無など選べるBTOに対応し、基本構成の直販価格は99,980円。1月8日までは1,000円引きの98,980円となっている。また、1月21日まではMicrosoft Officeを特別価格でバンドルできるキャンペーンを行なっている。

 CPUは、冒頭でも紹介したとおり、デスクトップPC向けの「Core i5-8400」だ。6コア6スレッドに対応し、動作クロックは2.8GHz(Turbo Boost時は最大4GHz)。ストレージは、試用機では250GBのM.2対応SSDが搭載されていたが、先着1,500名まで512GBモデルに無料でアップグレードされるキャンペーンを行なっている。

 外付けGPUとして、こちらもデスクトップPC用のビデオカードに採用されることが多いNVIDIAの「GeForce GTX 1050」を搭載。負荷が軽めのPCゲームなら、十分遊べるレベルの基本スペックである。これら以外のおもな仕様は、下の表でまとめたとおりだ。

【表1】LEVEL-15FX080-i5-LNSXのスペック
OS Windows 10
CPU Core i5-8400(6コア/2.8GHz)
GPU GeForce GTX 1050(GDDR5 4GB)
メモリ DDR4-2400 SO-DIMM 8GB
ストレージ 250GB PCIe NVMe SSD
ディスプレイ 15.6型(1,920×1,080ドット、非光沢)
通信 IEEE 802.11ac、Bluetooth 5.0
おもなインターフェイス USB 3.0(1基はType-C)×3、USB 2.0、Mini DisplayPort、HDMI、100万画素Webカメラ、音声入出力
バッテリ駆動時間 約4.4時間
本体サイズ 約378×252×36mm(幅×奥行き×高さ)
重量 約2.38kg
税別直販価格 99,980円

CPUはデスクトップPCと同じくCPUソケットに固定

 やはり気になるのは、デスクトップPC向けのCPUをどう固定しているかだろう。今回、メーカーの許諾を得て背面のカバーを外して内部を確認してみると、ノートPCのマザーボード上にはLGA1151のCPUソケットを装備しており、そこにCore i5-8400が固定されていた。

 これは、デスクトップPC用のマザーボードとまったく同じ構造である。細いネジで固定されている薄いヒートパイプとファンを外せば、CPUの本体にも容易にアクセスできる。

通常、ノートPC用のCPUはマザーボードにハンダ付けされており、取り外すことはできない。しかしLEVEL-15FX080-i5-LNSXのCore i5-8400は、デスクトップPCと同じようにCPUソケットに固定されているだけだ。

 なお、ユーザーによるCPU交換は保証外となるが、パソコン工房店頭に持ち込むと有償で交換対応を行なってくれる。推奨はしていないが、TDPが65WまでのCoreシリーズであればアップグレードすら可能という。筆者のようにおもに自作PCを日常的に利用しており、カスタマイズを重視するようなユーザーから見ると、なかなかおもしろそうなギミックと言える。

また、メモリスロットやSSDが組み込まれたM.2スロット、標準では空いている2.5インチベイにも、簡単にアクセスできる。メモリを増設したり、より大容量のストレージへ交換したりといった作業も、簡単に行なえるのだ。

厚みはホームノートPCと同等

 キーボードのキーピッチは実測値で約19mmと、スタンダードなサイズ感。右シフトキーがやや小さめになっているほかは、記号キーも含め一般的な外付けキーボードに近いサイズ感なので、使いやすさも変わらない。スペースキーの下には大きめのタッチパッドを装備する。

15.6型ワイドの液晶ディスプレイは、1,920×1,080ドットの解像度をサポートする非光沢タイプだ。光沢タイプに比べると色の鮮やかさには欠けるが、その分光の反射で画面が見にくくなることがないので、むしろこちらのほうが好みという人は多い。

 映像出力端子としては、左側面にMini DisplayPortとHDMIを1基ずつ装備する。より大型のパネルを搭載する液晶ディスプレイを接続し、マルチディスプレイ環境で使うのも便利だろう。USB 3.0ポートはType-Cが1基、Type-Aが2基という構成だ。

なお「デスクトップPCを搭載したノートPC」は、過去にもいくつか存在した。ただ、それらは冷却機構の関係で例外なく分厚く、デザイン的にも見劣りのするものばかりだった。

 しかしLEVEL-15FX080-i5-LNSXの厚みは3.6cmと、一般的なA4ノートPCに比べれば若干厚いかな……という程度に収まっている。全体的な見た目も普通のノートPCと見分けがつかないし、大きめのビジネスバッグなら十分に入るサイズ感だ。

10万円前後のノートPCとは思えない性能の高さ

デスクトップPC向けのCPUや外付けのGPUを搭載することもあり、やはり性能は気になるところだろう。今回は、いくつかの代表的なベンチマークテストを行ない、その実力を確かめてみた。参考値として、ジャイアン鈴木氏がレビューした15.6型ノート「ThinkPad X1 Extreme」のデータを使わせていただいている。

【表2】検証機のスペック
LEVEL-15FX080-i5-LNSX ThinkPad X1 Extreme
CPU Core i5-8400(6コア、2.8~4.30GHz) Core i7-8850H(6コア、2.6~4.3GHz)
GPU GeForce GTX 1050 Intel UHD Graphics 630(350MHz~1.15GHz)、GeForce GTX 1050 Ti
メモリ DDR4-2400 SO-DIMM 8GB DDR4-2666 SDRAM 16GB
ストレージ 250GB NVMe SSD 512GB SSD「MZVLB512HAJQ-000」(NVMe PCIe)
OS Windows 10 Home Windows 10 Pro 64bit
ディスプレイ 15.6型、1,920×1,080ドット 15.6型、3,840×2,160ドット
サイズ(幅×奥行き×高さ) 約378×252×36mm 361.8×245.7×18.7mm
重量 約2.38kg 約1.84kg

 まずは、いくつかの基本的なベンチマークテストの結果を紹介しよう。

【表3】ベンチマーク結果
LEVEL-15FX080-i5-LNSX ThinkPad X1 Extreme
PCMark 10 v1.1.1739
PCMark 10 Extended score 4,461 4,380
Essentials 7,825 7,717
App Start-up score 10,286 9,864
Video Conferencing score 6,636 7,515
Web Browsing score 7,020 6,200
Productivity 6,278 6,222
Spreadsheets score 8,059 7,705
Writing score 4,891 5,026
Digital Content Creation 4,797 4,749
Photo Editing score 4,737 5,790
Rendering and Visualization score 5,793 5,321
Video Editting score 4,023 3,477
Gaming 4,543 -
Graphics score 5,925 -
Physics score 11,270 -
Combined score 2,291 -
3DMark
v2.6.6238 v2.5.5029
Time Spy 1,881 2,351
Fire Strike 5,607 6,133
Sky Diver 17,104 14,690
Cloud Gate 19,874 14,610
CINEBENCH R15.0
CPU 930 cb 1,187 cb
CPU(Single Core) 170 cb 182 cb
CrystalDiskMark
6.0.2 6.0.1
Q32T1 シーケンシャルリード 3024 MB/s 3,377.236 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト 764.2 MB/s 1,894.433 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード 799.1 MB/s 1,015.840 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト 786.5 MB/s 1,588.485 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード 598.1 MB/s 351.619 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト 426.3 MB/s 276.488 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード 55.15 MB/s 42.626 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト 133.4 MB/s 113.902 MB/s

 筆者は以前、Core i5-8400とGeForce GTX 1050 Ti搭載ビデオカードで自作PCを作ったことがあるが、PCMark 10の数値はそのときの数値よりやや低い程度である。GPUのグレードが1つ低いことを考えると、妥当な数値だろう。

 またストレージのシーケンシャルリードは3GB/sを超え、NVMe対応のM.2対応SSDらしい数値だ。CINEBENCH R15.0のマルチスレッド機能も高く、Windows 10の各種操作で不満を感じることはない。大雑把に言えば、これらは10万円を切る価格で購入できるノートPCのレベルをはるかに超えている。

PCゲームも安心してプレイできる

 さらにPCゲームへの適性を見るため、UBIソフトの「Tom Clancy’s Rainbow Six Siege」と、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」を実行した。

 さらにデスクトップPC向けのCPUは、ノートPC向けと比べると発熱の目安となるTDPが高い。そのため発熱も気になるところだ。そこでフルHD解像度でH.264/AVC形式の動画を1時間再生したときの温度と、負荷の高いPCゲームの連続プレイを想定し、3DMarkのFire Strikeを1時間ループ実行したときの温度も計測してみた。

【表3】ゲーム系ベンチマーク
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク
1,920×1,080ドット、高品質、フルスクリーン 2,273(重い)
1,920×1,080ドット、標準品質、フルスクリーン 3,395(普通)
Tom Clancy’s Rainbow Six Siege
1,920×1,080ドット、最高、フルスクリーン、(全般・最小/平均/最大) 47.5/75.3/103.2 fps
1,920×1,080ドット、高、フルスクリーン、(全般・最小/平均/最大) 50.2/84.9/123.7 fps
各部の温度
アイドル時(CPU) 26℃
動画再生時(CPU) 31℃
3DMark時(CPU) 63℃
アイドル時(GPU) 34℃
動画再生時(GPU) 38℃
3DMark時(GPU) 50℃

 比較的描画負荷が高いとされているFINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークでは、高品質時に描画の遅れが目立ったが、標準品質ならスムーズに表示された。一方で負荷はそれほど高くないTom Clancy’s Rainbow Six Siegeでは、グラフィックス設定を最高にしても、プレイ中にコマ落ちを感じる場面はほとんどない。

CPUやGPUの温度は、予想したよりも低い数字だった。ノートPC向けCPUと比べるとTDPが高いCore i5-8400でも、CPU温度は63℃にとどまっており、熱暴走を起こすような状況ではなかった。ゲームPCとしても安心して利用できそうだ。

 ただ、PCゲームや3DMark、PCMark 10などCPUやGPUの負荷が高いベンチマークテストの最中は、かなりファンの音が大きくなる。書類作成などでは、CPUファンやGPUファンはほぼ回転せず、無音状態で利用できたのだが、ゲーム中はかなり厳しい。ゲームプレイ中は、ヘッドフォンでサウンドを楽しむほうがよいだろう。

 10万円を切る価格ながら、驚くべき性能を搭載する買い得感の高いノートPCだ。普段は書類作成で利用するが、たまにはちょっとゲームで息抜きもしたい、というよくばりなユーザーのツボを突く仕上がりと言える。

 新入学の高校生や大学生にもおすすめだ。基本性能は非常に高いが、さらに拡張性も十分確保されており、学校に通う間はもちろん、卒業してからでも拡張しながら長く使い続けられることは間違いない。幅広いユーザーにオススメできる、完成度の高いノートPCだ。