あなたが使っているWindows 10のバージョン、本当にご存じですか?

Windowsに詳しい人なら、自分のPCが最新のバージョンを実行しているのか否か、認識していることでしょう。しかし、コンピューターに不慣れな人にとってはそうではないでしょう。そんな不慣れな人にとって、Windowsのバージョンは謎でしかないかもしれません。

Windows 10は“最後のバージョンのWindows”はまやかし?

Windows 10は2015年7月にリリースされたとき、Windows 10は“最後のバージョンのWindowsになる(the last version of Windows)”と表現され、登場しました。 

Windows 8.1以前のように数年おきにメジャーバージョンアップを提供するのではなく、新機能をアップグレード(のちに「機能更新プログラム」と呼ばれるようになったもの)として継続的に提供するという方針になりました。 

確かにその後も「Windows 10」の後継製品の名前は聞きませんし、Windows 10の内部バージョン番号はリリースされてから3年以上経った今も「10.0」のまま変わりません。 

しかし、Windowsに詳しい人やIT技術者なら承知のように、Windows 10は年に2回、「機能更新プログラム」という形で新バージョンがリリースされてきました。マイクロソフトが方針を変えない限り今後もこのペースでリリースされ続けます。

Windows 10の最初のバージョン(ビルド10240、画面左)と最新バージョン(バージョン1809、ビルド17763)。最初のバージョンはYYMM形式のバージョン番号は持たないが、便宜上、バージョン1507と呼ばれることもある。この2つの間に5つのバージョンが存在する


 そして、機能更新プログラムは、年に2回という短いサイクルで繰り返される事実上のメジャーバージョンアップです。機能更新プログラムは他の更新プログラム(品質更新プログラムや定義の更新)と同じようにWindows Updateを通じて提供されるため、エンドユーザーにとっては分かりにくくなっていますが、機能更新プログラムのインストールで行われるのは、システム設定とユーザーデータ、アプリケーションを保持しながらの、新しいOSバージョンへのアップグレードインストールなのです。 

Windows Updateで簡単になったとは言っても、アップグレードインストールは、ハードウェア環境(ハードディスク空き領域)や互換性(特に、CPUやチップセット)やアプリケーションの互換性(特に、他社製のウイルス対策ソフトや日本語入力システム)の影響を受ける可能性があり、アップグレードが失敗したり、アップグレード後に問題が発生し以前のバージョンに戻したりする必要が生じたりといったリスクを伴うものです。 

最新のWindows 10バージョン1809は、一部の状況下でユーザーデータが失われるという問題が発覚し、ロールアウト(Windows Updateによる提供およびメディアの提供)が一時停止されるという問題を引き起こしました(ロールアウトは11月中頃から段階的に再開されています)。 

詳しい人にも不慣れな人にも分かりにくいWindows 10のバージョン表記

 問題なくアップグレードできれば良いのですが、そうでない場合は、正常な状態に戻すのに苦労することでしょう。自分で何とかできる人ならいいですが、不慣れな人にとっては、購入元など第三者に費用をかけてお願いするしかないと思います。そもそも、不慣れな人にとって、Windows 10はWindows 10であり、それ以外の区別(詳細なバージョン)は難しいでしょう。機能更新プログラムと品質更新プログラムは、どちらも同じ更新プログラムに見えるのではないでしょうか。 

Windows 10のバージョンが変わっても見た目が大きく変わることはありませんが、細かな表示や操作方法が変わっていたり、仕様が大きく変更になっていたり、特定の機能を利用するための要件になっていたりします。 

たとえば、電話サポートで不慣れな人に操作してもらうという場合、まず詳細なバージョンを確認することが重要ですが、それを確認してもらうまでが一苦労なのではないでしょうか(その手順を今回説明するつもりはありません)。直感的な操作を可能とするWindows 10のデザインは、言葉で説明するのが厄介なところが多々あるからです。スタートボタンをクリックしてくださいと言って、通じる人はいいですが、通じない人もいるのです。 

製品名 マーケティング上の名称 バージョン 内部バージョン ビルド コードネーム
Windows 7 Windows 7 6.1 7601(SP1) Blackcomb、Vienna、Windows 7
Windows 8 Windows 8 6.2 9200 8
Windows 8.1 Windows 8.1 6.3 9600 Windows Blue
Windows 10 Windows 10 1507(便宜上) 10 10240 Threshold、Threshold 1(TH1)
Windows 10 November Update 1511 10 10586 Threshold 2(TH2)
Windows 10 Anniversary Update 1607 10 14393 Redstone 1(RS1)
Windows 10 Creators Update 1703 10 15063 Redstone 2(RS2)
Windows 10 Fall Creators Update 1709 10 16299 Redstone 3(RS3)
Windows 10 April 2018 Update 1803 10 17134 Redstone 4(RS4)
Windows 10 October 2018 Update 1809 10 17763 Redstone 5(RS5)
Windows 10 未定 1903(予定) 10 未定 19H1
表1:Windows 7からWindows 10のバージョン情報。網掛け部分は2018年12月時点で既にサポートが完全に終了した製品。Windows 10バージョン1507はLTSCであるWindows 10 Enterprise 2015 LTSB(LTSBはLTSCの旧称)でサポートされている

表1は、Windows 7からWindows 10までの製品名とバージョン情報をまとめたものです。Windows 10の詳細なバージョンはビルド番号で識別できますが、Windows 10の2番目のバージョンからYYMM形式(YYは西暦の下2桁、MMは2桁の月のバージョン番号が採用されました。ただし、これはビルドが完成した年月に基づくものであり、リリース日と一致しているわけではありません(最近はその翌月にリリース)。YYMM形式のバージョン表記は、現在ではOffice 365やSystem Center製品などにも採用されています。 

一方、リリース時には「Windows 10 Anniversary Upate」といった通称、いわばマーケティング上の名前が多用されます。この通称は、オンラインのドキュメントやブログ記事、書籍などで登場しますが、Windowsのユーザーインターフェイスの中に出てくることはほとんどありません。 

「Windows 10 April 2018 Update」と「Windows 10 October 2018 Update」にいたっては、名前の意味が薄れてしまっているものもあります(前者は時差の関係で日本では5月1日リリース、後者は11月に再リリース)。筆者がWindows 10のユーザーインターフェイスの中でマーケティング名を唯一見つけたのは、Hyper-Vの仮想マシンの構成バージョンのサポート状況を示すGet-VMHostSupportedVersionコマンドレットの出力結果だけです。 

Windows 10のバージョンを識別するため、コードネーム(開発コード名)で表現する人もいます。コードネームはマーケティング上の名前と同様に、Windows 10のユーザーインターフェイスの中には登場しません。技術者どうしの情報交換ならコードネームを使用したとしても何の問題もありません。しかし、前回紹介した以下の問題の公式ブログの説明にあるように、YYMM形式のバージョン番号は併記していますが、コードネームを当たり前のように用いて説明するのはいかがなものかと思いませんか。 

Windows 10の最初のバージョンがリリースされてから3年が経過し、技術者向けのドキュメントは初期の頃に比べて充実してきました。しかし、バージョンが変わるたびに、細かな変更が行われるため、ドキュメントによっては同じページ内ですべてのバージョンについて説明しようとして、非常に分かりにくくなっているものもあります。例えば、以下のドキュメントです。Windowsの技術者にとっても、Windows 10のバージョンは一筋縄ではいかないのです。 

Windows Server 2016は“最後のWindows Server”?

バージョンの分かりにくさは、いまやWindows Serverにも及んでいます。表2に、Windows Server 2008から最新および次のWindows Serverバージョンまでのバージョン情報をまとめました。

製品名 バージョン 内部バージョン ビルド 同じビルドベースのWindows OS
Windows Server 2008 6 6002(SP2) Windows Vista
Windows Server 2008 R2 6.1 7601(SP1) Windows 7
Windows Server 2012 6.2 9200 Windows 8
Windows Server 2012 R2 6.3 9600 Windows 8.1
Windows Server 2016 (LTSC) 1607 10 14393 Windows 10バージョン1607
Windows Server 2016 Nano Server (SAC) 1607 10 14393 Windows 10バージョン1607
Windows Server (SAC) 1709 10 16299 Windows 10バージョン1709
Windows Server (SAC) 1803 10 17134 Windows 10バージョン1803
Windows Server 2019 (LTSC) 1809 10 17763 Windows 10バージョン1809
Windows Server (SAC) 1809 10 17763 Windows 10バージョン1809
Windows Server (SAC) 1903 10 未定 Windows 10バージョン1903
表2:Windows Server 2008から最新および次のWindows Serverバージョンまでのバージョン情報。Windows Server 2016のNano Serverは2018年10月にサポート終了
 Windows 10バージョン1809と同時に、Windows Serverの最新バージョンであるWindows Server 2019がリリースされています。Windows Serverは現在、従来と同じ10年のサポートが提供される長期サービルチャネル(Long-Term Servicing Channel、LTSC)と、18か月のサポートが提供される半期チャネル(Semi-Annual Channel、SAC)のサービスチャネルで提供されています。 

LTSCとSACの2つのサービスチャネルが登場したことで、Windows Serverのバージョンも分かりにくくなりました。Windows Server 2019がWindows Serverの最新バージョンと言いましたが、同時にWindows Server, version 1809がSACでリリースされており、これらはどちらもWindows 10バージョン1809と同じバージョンとビルドがベースになっています。 

Windows Serverの管理者であれば、自分が管理しているWindows Serverのバージョンはちゃんと認識しているでしょう。しかし、Windows Server向けの品質更新プログラムに関しては、少し注意が必要です。Windows Server, version 1709以降のWindows Serverの品質更新プログラムの名前は、「Windows Server 2016(YYMM)の累積更新プログラム」のようになっているのです。「Windows Server 2016」という名称が、更新プログラムに関しては“最後のバージョンのWindows”の「Windows 10」と同じ扱われ方をしているわけです。 

ちなみに、Windows Server 2019、Windows Server, version 1809の品質更新プログラムは共通であり、どちらも「Windows Server 2016(1809)の累積更新プログラム」のような名前になります。Windows Server 2019を更新する場合、これで本当にいいのかと不安になるかもしれません。(補足:2018年11月以降に提供されたWindows Server 2019およびWindows Server, version 1809向けの更新プログラムについては、名称が「Windows Server 2019 (1809) の累積更新プログラム」や「Windows Server 2019のセキュリティ更新プログラム」に改善されました。) 

Windows Updateで更新しているなら、適切なものが検出、インストールされるので問題はありませんが、Windows Server Update Services(WSUS)で更新プログラムを承認する場合や、Microsoft Update Catalogサイトから更新プログラムをダウンロードする際には、間違いのないように注意する必要があります。