グーグル「Pixel Slate」を使ってみて--長所と短所、「iPad Pro」との比較など

筆者は、ラップトップにもなるタブレットを夢見てきた。「Microsoft Surface」はそれを既に実現している。「iPad Pro」はそれに挑戦しているが、諸要素の半分しか実現できていないように思える。そして新たに登場したGoogleの「Pixel Slate」は、iPad Proに最も欠けているものを提供している。一方でいくつかの弱点もあり、奇妙なことにそれらはiPad Proが特に得意とすることでもある。

筆者が1週間にわたりPixel Slateを使ってみて感じた、素晴らしい点と残念な点を、iPad Proとの比較も交えながらお伝えする。

素晴らしい点

キーボードはまるでノートPC(だが、どちらを選ぶべきか?)

 筆者はPixel Slateと一緒に2つのキーボードアクセサリを受け取った。Google独自の「Pixel Slate Keyboard」(199ドル:約2万2500円)とBrydge製の「G-Type」(160ドル:約1万8100円)だ。いずれも非常に優れたキーボードで、ノートPC風の印象を与える大型トラックパッドを搭載している。だが、使用感や欠点は大きく異なる。

 GoogleのPixel Slate Keyboardは、Microsoftの「Surface Pro」のキーボードとよく似ている。デスクの上に置いて使用するように設計されており、背面のカバーがマグネット式の角度を調節可能なスタンドの役割を果たす。キーは円形だが、満足できる機構を備えており、間隔も十分に確保されている。ケースはPixel Slateの側面の磁気コネクタで固定され、キーボードに電力を供給する。フォリオケースとしても使用できる。だが、Appleの新しいiPad Proのキーボードと違って、膝の上での使用には適さない。フォリオケースとしても奇妙な感じだ。プラスチック製のキーボードカバーは、閉じるとPixel Slateのディスプレイ上をスライドするような感じがする。

筆者はBrydgeのG-Typeを使うことの方が多かった。G-TypeはPixel Slateをクラムシェル型のノートPCに変身させる。文字を入力するときの感触も素晴らしい。ただし、G-Typeを折り返して、Slateをタブレットとして使うことはできないので、その場合はG-Typeを取り外さなければならない。Bluetooth経由でペアリングし、Slateとは別に充電する必要がある。G-Typeを使用するときは、Slateをゴム製のブラケットに差し込んで固定する。Googleのキーボードに比べると、優雅ではなく、安定感も劣るように感じた。Slateの本体を保護する機能もない。

筆者はどちらかというとG-Typeの方が好きだが、Pixel Slate Keyboardはバックライト付きのキーを備えるほか、外出時のタブレットケースとしてはG-Typeより優れている。

「Chrome OS」は望み通りに動いてくれる

 Pixel Slateの「Chrome」ブラウザは、Chromeの通常のデスクトップ版と同じように動作する。筆者はそれ以上のことをChromeに求めていない。同時にたくさんのタブが開かれた状態でも、ウェブページは正常に開いて読み込まれ、全てが問題なく機能する。これは当初から一貫した「Chromebook」の魅力だった。Pixel Slateも例外ではない。

指紋リーダーは便利

 Pixel Slateの側面のボタンは指紋リーダーの機能も備えており、これを使えば、パスワードなしで素早くサインインできる。ただし、筆者が見た限り、この指紋リーダーはそれほど多くの用途には使用できず、iPad Proの「Face ID」ほどシームレスに統合されているわけでもない。

バッテリの持ちは良好

 筆者の使用方法だと、Pixel Slateは1回のフル充電でほぼ丸1日持続した。これは十分すぎるように思える。ゲームをプレイしたり、動画をストリーミングしたり、多くのタブを開きっぱなしにしたりしても、バッテリが急激に減ることはなかった。

常時オンの「Googleアシスタント」をすぐに利用できるのは便利

 タップして、さまざまなことを頼んだり、情報の検索などを実行したりできるので、Pixel Slateは、「Pixel」スマートフォンを大画面で使用しているような印象を与える。キーボードを押してGoogleアシスタントにアクセスできる機能を筆者は気に入った。カフェテリアでオフィスのWi-Fiを利用中に、Googleアシスタントが筆者の声に反応してくれないことも何度かあったが、「Hey, Google」と言うだけで、手を使わずにお薦めのレストランの情報を入手できるのはクールだ。Googleアシスタントはこちらの予想通りに機能してくれるので、Googleアシスタントが搭載されたスマートスクリーンをもう1台手に入れたような気分になった。

ディスプレイの画質は綺麗

 Pixel Slateの高解像度(3000×2000ピクセル)の12.3インチ「Molecular Display」はとても良いが、常に素晴らしいわけではない。最新のiPad Proのディスプレイに比べると、斜めから見たときに、カラーやテキストが白っぽく見えることもあった。ディスプレイのガラスも反射しがちだ。

USB-Cポートが2基あるのは便利

 「iPad」と比較するなら、少なくともPixel Slateには、2つ目のUSB-Cポートが搭載されている。つまり、充電中に有線のヘッドホンを使ったり、外部ディスプレイと接続しながら充電したりできるということだ。

気に入らなかった点

価格

 Chromebookは格安で購入できるデバイス、つまりネットブックに取って代わる現代的なノートPCとして誕生した。200ドル(約2万円強)のノートPCという夢のデバイスだった。

 そこで、Pixel Slateがキーボードとペンを含めて400ドル~500ドル(4万円台半ば~5万円台半ば)であれば、人々は魅力を感じるかもしれない。だが、iPad Pro並みに高価なPixel Slateを誰かが購入するとは、筆者には思えない。確かに、Pixel Slateの価格は599ドルからとなっている。しかし、おそらく人々が欲しがるであろう、より高速なシステムを選択すれば、価格は一気に跳ね上がる。筆者は全ての構成オプションをテストすることはできなかったが、Googleが送ってくれたレビュー用の端末は、「Core i5」プロセッサ、8GバイトのRAM、128GバイトのSSDを搭載する1000ドル(約11万円)の構成だった。ただし、箱に入っているのは、タブレット本体とヘッドホンアダプタだけだ。199ドルのPixel Slate Keyboardと99ドルの「Pixelbook Pen」は別売である。

ストレージ拡張スロットは非搭載

 Pixel Slateには、SDカードスロットもmicroSDカードスロットも搭載されていないので、本体のオンボードストレージで妥協するか、USB-C接続の外付けドライブを使用するしかない。599ドルの構成の32GバイトのストレージはChromebookの基本的な用途には十分なはずだが、microSDカードを利用できないことには不満を感じる。

Chrome OSに縛られ、「Google Play」は「iOS」の「App Store」にかなわない

 Chrome OSにも利点はある。自動でアップデートされること、クリーンでセキュリティが強固なこと、そして、瞬時に起動することだ。だが、それは作業にGoogleのOSに縛られることも意味する。アプリ間でのマルチタスキングはスムーズに感じられないこともあるが、PCのようにアプリをウィンドウ内で移動させることができる。

 Google Playのアプリの品揃えは予想よりも充実しており、Pixel Slateは多くの「Android」アプリをサポートするが、筆者の使用するほぼ全てのChrome OSアプリはオンライン状態でなければ使えない。オフラインで使用できるアプリもいくつか存在するが、全体的なオフラインの体験はiPad Proよりもはるかに劣る。Chromeは子供が使う場合や日常の気軽に使用するコンピュータとしては最適な環境だ。だが、価格の高さを考えると、筆者はそれほど寛容にはなれない。

 同じように、Google Playの標準のAndroidアプリを使用できるのは素晴らしいことだが、低価格なデバイスでできたら、もっと素晴らしいと感じただろう。アプリのパフォーマンスと品揃えは、筆者が何年も前にChromebookを常用していた頃に比べれば改善されているとはいえ、まだiPadから乗り換えようという気にはならない。

Pixelbook Penは「Apple Pencil」に見劣りする

 Pixelbook Penは「Surface Pen」やApple Pencilと同様、感圧描画機能を提供するが、この中では最下位の選択肢だと筆者には思えた。競合製品よりもずんぐりしたPixelbook Penは1本の単6電池を使用し、「Google Keep」(ここに素早くメモをとることが可能)や「Adobe Photoshop Sketch」といったさまざまなスケッチアプリやメモ作成アプリと連携するが、遅延が頻繁に発生する。さらに、GoogleのOSはペン先がどこに移動するのかを概算して機能させているように思える。これが原因で、落書きしていた曲線の位置が若干ずれた。これには不満を覚えた。

ヘッドホンジャックが非搭載

 ヘッドホンジャック廃止の流れが続いている。まずスマートフォン、そして今度はタブレットが対象だ。2018年に入ってiPad Proで廃止された。Pixel Slateもこれに倣い、代わりに2基のUSB-Cポートのみを備えている。1基よりも2基のUSB-Cポートがある方がいいのは確かだ。GoogleはUSB-C to 3.5mmのヘッドホンジャックアダプタも同梱している(不可解なことに、Appleはそれをしていない)。しかし、それで3.5mmジャックの廃止に対する不満が減るわけでもない。

タブレットとしては重たい

 Pixel Slateの重量は731gで、変に中身がぎっしり詰まっているかのように感じられる。オプションのキーボードの1つを接続してノートPCとして見れば、もっと普通な感じがする。いずれにせよ、快適かつ気軽に読書を楽しめるようなタブレットではない。

たまにバグが見られる

 まれに奇妙なポップアップが表示されたり、ウェブページが適切にスクロールしなかったりするなどのバグが見られた。Chrome OSのアップデートで修正されるのか、Pixel Slateに固有のものなのかは不明だ。

誰のためのデバイス?

 筆者はまだPixel Slateを試しているところだが、599ドルのこのタブレットを、より安価なChromebookや、Surface ProまたはiPadよりも好むのはどのような人かという疑問を解消できずにいる。Chrome OS搭載コンバーチブルの将来像に向けたレファレンスデザインとしてなら、Pixel Slateは着実な一歩といえるだろう。しかし、誰かに購入を勧めようとは思わない。勧める相手がいるとすれば、Linuxも使えるハイエンドのChrome OSタブレットが欲しくて、なおかつ懐にかなり余裕のある人だけだろう。

 Pixel Slateを使ってみて、高性能なキーボードとトラックパッド、それに優れたブラウザがあれば違いが出るということは分かった。そして、それはiPad Proに求められながら欠けているものでもある。それでも、Pixel Slateはその他の人々にとって、その高い価格に見合うものとは思えない。